新型山手線
技術と人の両輪で、
次世代のあたりまえをつくる。
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- 輸送サービス
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総合職
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- 機械設備
- 土木(生活サービス含む)
- 列車制御システム・エネルギー・情報通信
エリア職
- 駅・乗務員
- 車両
- 機械設備
- 土木
- 列車制御システム・エネルギー・情報通信
ジョブ型
自動運転化で、
「究極の安全」へ。
次世代技術が、人の創造性を輝かせる。
1日に100万人以上ものお客さまを運ぶ東京の大動脈、山手線。誰もがあたりまえに電車に乗り、あたりまえに目的地へと到着する。その「あたりまえ」を支えるのは、長年にわたりJR東日本が築き上げてきた運転技術やメンテナンス技術、それらノウハウの結晶です。そんな山手線は今、さらなる「究極の安全」を目指して、自動運転化の技術開発に取り組んでいます。
そもそもなぜ、自動運転化を目指すのか。その背景には、日本全体が人口減少社会を迎えており、それに伴う労働人口の減少により、鉄道業界においても運転士を含めた社員の確保・育成が困難になってきていることが挙げられます。現在、JR東日本においても大量採用時代の社員が定年を迎えており、多くのベテラン運転士が退職しています。さらに、日本全体の生産年齢人口(15~64歳)は2050年までに約2000万人減少すると予測されており、人材不足はますます顕著になることが予想されます。システム化できる部分はAIや機械に任せ、今いる社員や新たにご入社いただく皆さんに対しては「人ならではの仕事」に専念できる環境を提供する。安定した鉄道網を継続しながら、働き手一人ひとりが充実して働ける環境を模索しています。「自動運転化=人が不要になる」ということではありません。お客さまを手助けする接遇サービスや緊急時の対応といった柔軟な判断力が求められる仕事から、くらしを便利にする企画立案といった創造力が求められる仕事まで、社員の力が不可欠な業務はまだまだ多くあります。自動運転化の技術を高めること。それはつまり、人の持つ本質的な力を輝かせることでもあると私たちは考えています。
運転士たちがつくり上げた、理想の運転士。
自動運転のメリットとして「安全性の向上」が挙げられます。人が運転する以上、どうしてもヒューマンエラーは避けられません。もちろん、現在の車両においてもヒューマンエラーを補うためのサポートシステムが多く備わっていますが、私たちが目指すのは、エラーを補完するのではなく、エラーをゼロにすること。都心を走る交通インフラとして、山手線全50編成が安定的に走り続ける未来を目指し、あらゆる技術開発に取り組んでいます。
中でも、自動運転化の心臓となる技術が、当社の開発した「ATO(Automatic Train Operation)」と呼ばれる自動列車運転装置です。これは、列車が駅を出発すると自動的に目標速度まで加速し、定速運転や惰行を行いながら、到着駅に近づくと自動で減速、ホームドアにぴたりと合わせて停止する技術です。当社では、このATOの開発にあたって、運転士が中心となってプロジェクトを推進しました。国鉄時代から培われた運転士のノウハウは、紛れもなくJR東日本の大きな財産です。しかし、その多くは指導者と見習いの関係で受け継がれ、区間ごとによる細かな加速・減速のタイミングなど、他の運転士には見えづらい暗黙知も存在しました。そこで、現場第一線の運転士にも参加をしてもらい自動運転化の勉強会を実施。その上で、最適な運転の在り方とはどのようなものか、運転士たちの間で意見交換を積み重ね、暗黙知であった技術をオープンにしながら自動運転の最適解をATOの開発に活かしていきました。通常、このような技術開発は電気メーカーが運転士にヒアリングしながら進めていくことが一般的ですが、本プロジェクトでは運転士が主体となって推進した新たな取り組みでもあります。運転士たちがつくり上げた、理想の運転士。より安全で、より快適となる山手線の未来は、すぐそこまで来ています。
実証実験から見えてきた課題。
2022年、山手線の50編成のうち2編成にATOを搭載し、お客さまが利用する営業時間内での実証実験を約2ヶ月半かけて実施しました。運転士はATOのボタンを押して発進操作のみ行い、加速・減速・停止はすべて自動で行われる半自動運転の検証です。結果として大きなトラブルなく運行を終え、実際にご乗車いただいたお客さまからも「揺れが全く気にならなかった」との声を頂戴し、期待以上の成果を得ることができました。さらに、通常走行時はムラのない加速や減速で走行できるため、走行エネルギーにおいても約14%もの省エネ効果が生まれています。
しかし、イレギュラーな状況ではまだまだ課題は残ります。例えば、前の列車が遅れていたり、ダイヤ全体に乱れが生じているとき、運転士ならば状況を見ながら徐々に減速できますが、ATOでは強めのブレーキが作動してお客さまに負担がかかることも。こうした課題を解消するために、新しい列車制御システム「ATACS」の山手線導入を図っています。ATACSとは、無線を使って情報伝送を行い、自動で減速をしながら列車間隔の制御を行う技術です。一般的な運転は、地上信号機によって後続列車の運転士に走行可能な区間と速度を指示する仕組みですが、一方でATACSは信号機を介せず、リアルタイムな情報連携を実現することで、ダイヤが乱れた際もスムーズな加減速が可能となります。ATACSとATOを組み合わせることで、ヒューマンエラーを防ぎながら、より安全で柔軟な自動運転を可能とします。
技術で見る。
人で見極める。
走りながら、自動で点検。
山手線は走行技術だけでなく、メンテナンス技術も日々進化しています。現在の山手線では「CBM(Condition Based Maintenance)」と呼ばれる最新モニタリング技術が採用されており、これまで技術者の目で定期的に行っていた点検(時間基準保全)から、センサーやカメラによる継続的な点検(状態基準保全)へと移り変わっています。山手線に搭載されたCBMでは、大きく「線路」と「車両」の点検を自動化。線路については、これまで営業走行していない深夜に技術者が徒歩で点検をしていましたが、CBMでは車両の床下にレーザーおよびカメラを搭載し、走行しながら線路の歪みや部材の劣化状況を数10cmごとに自動測定します。営業走行中のリアルタイムデータはすべてPC等のデバイス上で遠隔確認することができるため、細かな異常を瞬時に把握できるようになりました。また、山手線は約1時間で線区を1周するため、この自動モニタリングにおいても約1時間に1回の点検を行うことになります。この膨大なビッグデータを活用することで異常の兆候を早期に察知し、より的確なメンテナンスの修繕計画を図ることができます。
車両のモニタリングでは、車内に設置された検測装置が機器の劣化や異常を自動的に把握。ドアの閉まり具合や空調の異常など、乗客の安全や快適性を守るための検測が常に行われ、運転室や遠隔モニターでチェックできます。つまり、山手線自身が目となって、車両の状態を確認するのです。もちろん、自動点検がすべてのリスクを排除できるわけではありません。もし故障の兆候が100個検知されたとしても、その中で本当に重要なものを見極め、適切な判断と修繕を行うのは人間の役目です。技術の目と、人間の目。この二つの目を組み合わせ、これまで培ってきたメンテナンス技術で、「究極の安全」を追求していきます。
時代に合わせて、
しなやかに進化する。
細部まで、気配りを施した車両。
2015年に運転を開始し、現在まで走り続けてきた山手線E235系。「お客さま、社会とコミュニケーションする車両」というコンセプトのもと、お客さまの目に見えるデザイン面から大きく刷新をしてきました。伝統のウグイス色を現代的なグラデーションに昇華したデザインは、外装からドア、車内の床にまで連動させ、直感的に人の動線が伝わる設計へ。内装においても、お年寄りの方から小さなお子さままで快適に過ごせるよう、優先席の増設や、車椅子やベビーカーにも配慮したフリースペースを設けました。その他、次世代の広告表現を可能にした3連のデジタルサイネージや、より多くの方の手が届きやすい荷物棚の高さ調整など、あらゆる気配りが随所に施されています。そこから約10年の歳月を経て、デザインや利便性にとどまらず、安全面からもお客さまとコミュニケーションを深められる技術開発を進めています。これまで培ってきた鉄道技術を芯としながら、柔軟なアイデアと推進力でしなやかに前進していく。鉄道業界をリードする企業として、新たな変革へと挑み続けます。これから入社される皆さんとともに、次世代の「あたりまえ」をつくり出すことを心から楽しみにしています。